ZEROHZ LIVE TOUR 2024「Across to the VANITY PHASE2」-TOUR FINAL-
2024/11/20(水) 豊洲PIT
「零[Hz]史上最高の、ライブをはじめようぜ!」
開始早々にROY(Vo)が叫んだこの言葉が、2024年4月からPHASE 1、PHASE 2を経た全44公演からなるLIVE TOUR 2024「Across to the VANITY」を完結させることとなった、11月20日に行われた豊洲PITでのワンマンライブを象徴していた。零[Hz]史上最大キャパ、さらにメンバーそれぞれが抱く憧れに一歩近づいたとも言える豊洲PITでライブを行ったことはもちろん、なによりも今できる最大限のプログラムで見せたアクトも含めたすべてが、“史上最高”というに相応しいファクトだった。
ただし重要なのは、その最高到達点が自然発生的なものではなく、しっかりと照準を定めたうえで辿り着いた結果であるということ。それは“Across to the VANITY”というツアータイトルを掲げたことにも明確に表れており、その基盤となっていたのは、実際にこの日もライブ終盤に演奏された「VANITY」という楽曲だ。2019年2月にリリースされた2ndフル・アルバム『ZELM』に収録され、今年4月にリリースされたミニ・アルバム『ZENITH』に再録(※初回盤のみに収録)された「VANITY」をこのタイミングで軸に掲げることになった理由は、この5年間に事務所からの独立を経験したりコロナ禍において物理的な制限を味わったりといったことから、この曲に込められた想いが進化したことが大きい。それは、“虚無”に対する葛藤を払拭し、その先を目指す強さを手に入れたということ。まさしく、“VANITY”に対峙するための機は熟したといったところだ。
退廃的なセットが組まれたステージに5人が登場し、赤いサーチライトに照らされる中で「ZIONN」のトランスを彷彿とさせるイントロが鳴り響けば、たちまち会場は高揚感を掻き立てられるデンジャラスな空気に包まれた。曲の展開やサウンドのハイセンスぶりに圧倒させられたのも束の間、「ROYAL RAMPAGE」「TRINITY∴ONENESS」と続くと、広い会場に似合う音像によって体感的に自由に乗せていくポピュラリティーを生み出していたことも、現在の零[Hz]のバンド力であるということを痛感させるものだった。
「4月から始まった長いツアーが今日で終わってしまうんですけども。寂しいとか緊張感よりも、もっと大事なものを吐き出してほしいの。それは〈幸せ!〉だったり〈楽しい!〉だったり、チーム零[Hz]たちが持ってきた俺たちへの愛をしっかり吐き出してください。最後まで楽しんでいこうぜ!」
RYOGA(Dr)の強靭なビートがきっかけとなった「N0.name」での絶唱や、ダウナーな雰囲気を醸し出した「j am out」中にギターソロを弾き倒すLeo(Gt)の横で高音のロングトーンをかまして“吐き出す”ことを我先に実行して見せたROY。さらに、“さぁ その手を鳴らせ”の歌詞に準えてハンズクラップをはじめとしてアグレッシブに沸いた「HERO」に続いて、「太陽はただ僕達を照らしている訳じゃない」では“僕はもう恐れない”というフレーズを投影するかのように、TEIKA(Ba)の個性的な歪みをきかせたベースを筆頭に見事な楽器陣のソロ回しを決めた。ここで暗転を挟み、Rio(Gt)が奏でるナチュラルな音色が映える物憂げなギターセッションから「星仰ぐ夜」がスタートすると、美しいアンサンブルと歌声の美しいファルセットが調和し、オーディエンスをくぎ付けにしていく。
こうして、今ツアーでの経験から培ってきたものを全部吐き出すと改めて意気込みを露わにして突入したラストスパート。トップナンバーを畳みかけていったのは白熱したエンディングを作り上げるためであったことは言うまでもないが、どこかショートドラマ的に零[Hz]の進化を凝縮するようなエモーショナルな展開であったとも言える。まずは、零[Hz]の楽曲におけるターニングポイントだった「AXIZ」でグルーヴを押し出すようにフロント陣が前衛的にアプローチすることで勢いづくと、「IDEATRUMP」に続いてイントロをアレンジする形で披露された「raison d’etre」は華やかさを増し、さらにロックサウンドにLeoが奏でるアコースティックギターを加えたパワーロックサウンドもまた、零[Hz]のオリジナリティとして強調していく。「BAKEMONO carnival」ではまさにトリップする勢いで狂騒ぶりを見せる中、ステージ上に雑多に組まれていると思っていた鉄骨の一部が“Hz”をサインするように光っていたのもまた粋な演出だった。そして、コールアンドレスポンスから突入した「POSE」で圧巻のヘヴィネスサウンドを轟かせながら一際印象付けたのは、バックモニターに大きく映し出した“You should be just the way you are”という歌詞にもあるフレーズで、英詞に添えた“-君は君らしくいるべきだ-”という訳も相まって強いメッセージが胸に刺さる。
そして、本編のラストナンバーは「ZERO QUALIA」。ピアノに乗せてサビを歌い上げた後、ROYは切々とこう続けた。
「おいで、豊洲PIT! 本当に今日は、楽しくて楽しくて、特別で特別で、幸せなライブをどうもありがとうございます。今日、ここに集まってくれた全員から見える景色、俺たちメンバーから見える景色、同じようで違います。PAさんも照明さんも、同じ場所にいるけど少し違います。けど、気持ちは一緒なんだよ。零[Hz]かっこいい、楽しい、幸せ、こんな素敵な気持ちを共有できるということを書いた曲をラストに届けたいと思います」
ずばり“ライブ”に対するアティテュードをしっかりと提示することでファンと共有していった、優しい幕締め。先ほど「AXIZ」ではラストに“虹”を表すように七色のレーザー光線が鋭く会場を貫いたのに対し、「ZERO QUALIA」では“十人十色”を象徴するようにステージを包み込むように七色の光が灯っていた。ここには、ひたむきな思いから強さを手にした包容力まで、彼らが手にした力の幅広さとそれを掴んだ道のりを重ねることもできた。多芸多才な零[Hz]の音楽性やサウンドはフィーチャーされるべきものであるが、そこに欠かすことができないのは、“音楽で変えられるものがある”というROYの信念から綴られる“想い”がエナジーとなっているということでもある。チーム零[Hz]という言葉をシンボルとした、人の温度を感じられるロックサウンド。これこそが、零[Hz]の最大の武器なのだ。
アンコールでは、「今日という日の思い出を少しでも持って帰ってほしい」と撮影可能をアナウンスして届けたバラード「叶えたい夢と、守れない君と」をはじめ、零[Hz]としては振付をレクチャーするという新たなアプローチを生み出した「妄想のパンタグラフ」も披露された。そして、アンコールラストには冒頭で触れた「VANITY」を用意し、「虚無の向こう側へ、ゼロの向こう側へ、零[Hz]の今までの向こう側へ……今日からはじまる最高の瞬間をしっかり受け取ってくれ!」とROYが今ツアーの核心に触れる形で締めくくった。
「零[Hz]が、豊洲PITでワンマンライブしてやったぞ! 俺たち5人がかっこいいのはもちろんわかっちゃってるけど(笑)、チーム零[Hz]一人ひとりの応援があるから俺たちは輝けるんだよ。お前たちの方こそスゲェかっこいいんだよ、わかるか!? これからも一緒にかっこつけてこうぜ!これからも一緒にかっこよくなっていこうぜ!」(ROY)
さらにダブルアンコールも起きて「ラストラリー」を演奏中、キャノン砲が宙を彩って華々しくエンディングを迎えた。すべて演奏を終え、あらゆる意味でバンドの最高到達点を達成した喜びを分かち合うように、ステージ中央で円陣を組んでいたメンバー。「これからも一緒にロックしていきましょう」という言葉を残していった終演後には、新たなヴィジュアルと共に2025年3月に東名阪にて7th ANNIVERSARY LIVE「SIXAXIZ-2025-」の開催を発表。強い絆で未来を切り開いていく零[Hz]の歩みはもう、誰にも止められない。
Report◎平井綾子
Photo◎かわどう / ゆうと。
01.ZIONN
02.ROYAL RAMPAGE
03.TRINITY∴ONENESS
04.N0.name
05.j am out
06.HERO
07.太陽はただ僕達を照らしている訳じゃない
08.星仰ぐ夜
09.AXIZ
10.IDEATRUMP
11.raison d’etre
12.BAKEMONO carnival
13.POSE
14.ZERO QUALIA
-EN-
01.叶えたい夢と、守れない君と
02.妄想のパンタグラフ
03.DarthHerz
04.VENOM
05.VANITY
-WEN-
01.ラストラリー
7th ANNIVERSARY LIVE「SIXAXIZ-2025-」
3/15(土) 名古屋E.L.L
3/16(日) 大阪BIG CAT
3/28(金) Spotify O-EAST