2007年の豪州での馬インフルエンザ(EI)発生により日本と豪州の生産界の関係にもたらされていた影響から立ち直るために、大きな一歩が踏み出された。インターナショナル・レースホース・トランスポート社(International Racehorse Transport:IRT)がシドニー・北海道間でチャーター便を約10年ぶりに運航したのだ。
11年前、豪州においてEIが発生した。その頃、馬の輸出入のあった日本でもEIが発生していた。これをうけ、豪州と北海道(ノーザンファームや社台スタリオンステーションなどがある)の間で種牡馬を行き来させられなくなっていた。
ここ数年、二国間の関係は回復し始めている。日本馬は以前と同じようにメルボルンのスプリングカーニバルで出走するようになり、モーリスのような種牡馬が豪州にシャトルされるようになった。しかしながら豪州政府は、日本馬を豪州に輸出する際の検疫所として東京の検疫施設しか承認していなかった。
これはすなわち、豪州・北海道間を行き来する馬が東京を経由するために1,100km以上の距離を馬運車やフェリーで移動しなければならないことを意味していた。しかし7月末、豪州・北海道間の直行ルートがついに再開されることになった。
IRT豪州のクリス・バーク(Chris Burke)社長はこう語った。「素晴らしい展開です。真夏の東京の湿気を考えれば、優良種牡馬の高価な産駒を長距離輸送することは良い対処法ではありませんでした」。
直行便は輸送時間を約10時間も短縮する。豪州に馬を輸出する際の検疫所として、北海道の検疫施設を豪州政府に承認してもらうために、IRTは日本の農水省と豪州の当局の両方と一緒に取り組んでいた。そして、それは6月に承認され、直行ルートの再開が実現した。
7月27日(金)、最初の直行チャーター便はシドニーを出発して北海道に到着した。この貨物機には、南半球の種付シーズンに合わせてディープインパクトのような一流種牡馬と交配させる繁殖牝馬が積まれていた。そして、その到着2時間後に、今度はシャトル種牡馬などを積んで豪州に戻って行った。
バーク氏はこう語った。「EI発生後は大変つらい時期を過ごしました。なぜならその当時、アローフィールドスタッド(Arrowfield Stud)のような牧場が、豪州から繁殖牝馬を送るのではなく、日本の一流種牡馬を呼び寄せるというコンセプトからイニシアティブを発揮していたからです」。
「それは成長しつつある市場でしたが、突然中断を余儀なくされました。再開するのにある程度時間が掛かりました。直行便の運航再開は10年間の多大な努力の成果です。これにより取引が再び活発となるだけではありません。私たちは取引を行うにあたってより良い方法を見つけつつありますし、双方の生産界の間でより良好な関係を築いています」。
バーク氏は、この直行ルートの再開の影響がすでに見られたと述べた。最初のチャーター便で連れて帰るために、豪州人は日本で将来有望な馬を探していた。
「興味深いことに、直行チャーター便が運航されると聞き、ここぞとばかりに日本で産駒を購買した豪州人もいました。これらの産駒は豪州のレースで競走し、将来的には種牡馬となり得るようなタイプです。豪州には欧州で購買したステイヤーが沢山いて、その市場は豪州人の間で大人気です。したがって今や、彼らは別の入手先を探しています。日本の重賞レベルの競走で活躍している5歳~6歳のステイヤーを手に入れて豪州に移籍させられるのであれば、それは悪い選択肢ではありません。その馬は移籍後もまた勝利を挙げられるでしょうし、将来は種牡馬として豪州の牧場で供用されるでしょう。私たちが探求しているのは、血統の国際化です。世界中の優良牝馬が優秀な種牡馬と交配するために日本に行くことは驚くべきことです。私たちは今や、それらの血統を引き継ぐ馬を日本で購買し、豪州や他の地域に輸出するチャンスに恵まれています」。
バーク氏は、今回交配のために日本に送られた繁殖牝馬を数週間のうちに豪州に連れて帰るために、IRTのフライトを再び運航することを望んでいる。もし採算がとれる頭数が集まれば、シャトルされた種牡馬を日本の拠点に戻すために、1月にもう一度フライトを運航する可能性がある。
By Mark Scully
[Racing Post 2018年8月2日「IRT bosses look to the future as charters between Hokkaido and Australia resume」]